※当文書の筆者はえらく音速が遅いのでもしかしたら同じような話が既に何処かで出ているかもしれませんがその辺は笑って許して下さい。

 「東方妖々夢」(注1)のタイトルについて考察してみようとふと考えた。
 「妖々夢」とはいったい何を意味するのだろうか。

 まず、流石に魂魄妖夢(注2)のことではないだろう。
 話が少々それるが、そもそもタイトルの意味について考えようと思ったのは「また妖夢のSSでも書こうかしらん」などと考えながらブレインストームしていた際に「妖夢と妖々夢って繋がりがあるのかな」とかぽろっと考えたことに端を発していたりするわけだったり。
 重要キャラであるとはいえ話の中核にいる存在ではないし、第一もし「妖々夢=妖夢」だとしたらラスボスの立場(注3)というものが全く無い。

 さて、ここでちょっと「東方紅魔郷」(注4)を考えてみる。
 これは分かりやすいタイトルである。「紅魔」とはずばり「東方紅魔郷」のラスボス、「永遠に紅い幼き月」レミリア=スカーレット(注5)を指すと見て間違いない(注6)
 すなわち「紅魔郷」とは「紅魔」レミリア=スカーレットの居所及びそこに向かう道――つまり主人公達の歩む道筋でありプレイヤーが自機を飛び回らせる空の名前を意味している。
 「the Embodiment of Scarlet Devil」というサブタイトルも「紅魔の具現」と直訳してみれば分かりやすい。これは字面通りのレミリアという存在の出現の他に「レミリアの出現により幻想郷は闇に閉ざされた」という現象まで表している。
 とどのつまり「紅魔郷」とはレミリアの物語なのである(注7)

 話を元に戻して「妖々夢」である。
 はっきり言ってこの字面から「妖々夢」ラスボスである西行寺幽々子(注8)の存在を伺うのは難しい。「々」くらいである。
 そしてサブタイトルは「Perfect Cherry Blossom」。直訳すれば「完全な桜の花」――ここは幽々子のスペルカードにもある「完全なる墨染の桜(注9)」と訳すのがスマートだろうか。
 確かに「桜」は「妖々夢」の主題である「春」のイメージであるし、ゲーム中でも「桜点」(注10)というシステムとして一役買っている。そしてラスボス幽々子のスペカともなる。
 だが「妖々夢」は「桜」それだけで語ることの出来る物語では無いし、第一「妖々夢」の意味はどうなるのか?

 「完全なる桜」とは何か。
 と考えれば答えは簡単に出てくる。五分咲きや八分咲きの桜を「完全」とは言えない。
 「満開の桜」を示していると見て間違いない。
 そして満開の桜と言えば、妖々夢のバックストーリーをご存じの方なら必ず連想する存在があるだろう。「妖々夢」の物語の中心に在る妖怪桜「西行妖」である。
 西行寺幽々子が白玉楼に現れてから、一度として花を開かせたことのない桜。
 「富士見の娘」の魂を白玉楼に眠らせる為、その満開の姿を結界として捧げた桜。
 この桜を盛大に花開かせ、そこに封印された存在を復活させてみたいと興味本位に考えた西行寺幽々子が、妖夢に春度を集めさせるよう命じたのが「妖々夢」の事の発端(注11)である。
 だが。

 幽々子が西行妖の開花を見ることは、決して無い。
―――― 東方妖々夢「キャラ設定.txt」より抜粋 ――――

 「Perfect Cherry Blossom」とは、幽々子にとって実現させたいと思う「夢」であり、実現することの出来ない「夢」物語である。
 「妖々夢」の「夢」とはすなわち幽々子の「夢」を指すのではないだろうか。
 では「妖々」は何を示すかといえば。このような解釈をしてみることにする。
 「妖」の片方を「あやしい」という意味で、もう片方を「あやかし」という意味で取るのだ。
 この「あやかし」とは勿論妖怪の意、転じて西行寺幽々子を表せば。

 とどのつまり「妖々夢」とは「西行寺幽々子のあやしき夢」。
 彼女の「夢」を巡って繰り広げられるどたばた騒ぎ。

 やはり「妖々夢」は西行寺幽々子の物語なのだ。



注1:東方妖々夢
 
上海アリス幻樂団にて開発・頒布されている弾幕シューティングゲーム「東方シリーズ」の第七作。作者はZUN氏。
 幻想郷から奪われた春を取り戻す為に戦う巫女と魔女とメイドの物語。
注2:魂魄妖夢
 白銀おかっぱ髪で庭師で剣術を操る程度の能力を持つ少女。春を奪った実行犯。初登場時の言動は辻強盗そのものである。
注3:ラスボスの立場
 かねてからノンカリスマと声高に言われているから、無くてもいいのかもしれないかもしれないけど。
注4:東方紅魔郷
 同じく上海アリス幻樂団制作「東方シリーズ」の第6弾。闇に閉ざされた幻想郷に光を取り戻す為に戦う巫女と魔女の物語。
注5:レミリア=スカーレット
 推定年齢500余歳の西洋系お嬢様。お嬢様らしく食事はお残しが多い(らしい)。カリスマ吸血鬼と紹介すると誤解を招きそうな気がする。
 紛れもない「紅」をシンボルカラーとしながらも立ち絵が白基調であるのがまた興味深い。
注6:間違いない
 以後筆者の考察は基本的に断言で行なうが、原則として「〜と思われる」が省略されていることを踏まえて読んで頂きたい。
 余談だが「間違いない」は長井秀和調で読んでもらえると嬉しかったり。
注7:レミリアの物語なのである
 断じてメイドやビブリオマニアやまして中国の物語では無い。
注8:西行寺幽々子
 ノンカリスマの東洋系お嬢様。亡霊の姫。ドリキャス。幽霊なので成長しないのだとすればいつか消滅するまでずっと年若いままである。侮れない。
注9:墨染の桜
 
Prominenceの元ネタ集によれば墨染の桜とは桜の種類。墨染寺の桜は取り敢えず関係ない模様。
注10:桜点
 ボーナス点の基準になったりバリアを貼れたりと、ゲーム的には中核に存在するファクターである。
注11:事の発端
 なんともはた迷惑極まりないわがままであるが、紅魔郷にしても発端は似たようなものだ。
 幻想郷のお嬢様というのはすべからくそのような発想に至るのかもしれない。
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