「かぼちゃのきもち」

 そこは、ここでないどこかの場末の酒場。
 その店のカウンターに、一組の客が座っている。
 今、新たに入ってきた客が、そのシルエットに一瞬ギョッとした。
(……ペンギンと、かぼちゃ……?)

「ほれ、お疲れさん。まーまずは一杯」
「オッサン臭いですな」
「黙れ」
「まあ、せっかくですから頂きましょう。ぐびぐび」
「うむ、良い飲みっぷりだな」
「ぃゃぁ、それほどでも」
「そして今日も良いシバカレっぷりだったな」
「うるさいYO!」
「しかし、正直お前もよく耐えるものだよなー」
「そうでショウカ?」
「うむ。俺はいつも、たまに撫でられる程度だが、聞くところによるとお前は喚ばれるたびにシバカレまくりだそーじゃないか。しかもユーザーだけでなく、サンバーレインにも」
「不器用デスカラ」
「どういうボケだ。
 でも、ちょっと真面目な話、どうしてつるんでられるモンだ?」
「ま、確かに姐さんは、タクのスヅリタンと違ってかなり冷たきお方ですけれどね。でも、姐さんだって良いところはあるんだYO!」
「ほう。例えば?」
「まあ、正直に言って、あの乳には抗いがたいデスナ」
「ほほう、乳か! 確かにな。あの乳は良い乳だ」

「へくしっ!」
「あやぁ〜。風邪ですか、レインさん?」
「んー、違うと思われ。多分かぼきちさんがあたしの噂でもしてるんじゃないかと。しかも主にダメ系」
「はぁ……」

「……というのわ冗談として」
「割と顔がマジだった気がしたが」
「そんな風に思テルなんて姐さんに知られたら煮付けにされちゃうYO!
 でもデスネ。俺も本当は、本気であの人に感謝してるのデスヨ。一人路頭に迷っていた俺を拾ってくれた時は、あの人が女神に見えたね」
「うむ、分からんでもないな。そういうのは」
「それにネェ。なんだかんだ言って俺たちって相性最高じゃナイデスカ? 例えばツグーナタソに拾われたとしても、あの子はメタル全然ダメだし」
「何かの儀式? とか言ってたな」
「その辺はいつか子一時間ほど問い詰めマス。ほれほれまぐにさん、コップが空ですゼ」
「おっとっと、すまんなぁ」
「そういうわけでー、傍目からはいろんな見られ方してるかもしれないけど、俺らはうまくやってるんだYO!」
「なるほど、そうかそうか。うむ、それは良いことだな。ほれ、もっと飲めうにゅうぃん」
「んぃ。仲良しこよしな姐さんと俺にカンパーイ!」

「……という顛末で、あたしはかぼきちさんを拾ったのですよ」
「わあ、良い話ですねー」
「そうかな」
「そうですよー。レインさんも、うにゅうぃんさんが困ってるのを助けてあげるなんて、とっても優しいんですね」
「いや、その時、お腹減ってて」
「……は?」
「で、連れて返ったんだけど、あれが入りきる鍋が無くてね」
「な、鍋?」
「大きい鍋が無いかなーと思ってたら戸棚の隅にカップ焼きそばがあったのを見つけたんで、めんどいので料理するのヤメマシタ。で、以後なんとなく飼ってます」
「……あやぁ〜……」

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